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不安定な視界、過敏な耳、震える心 第四章

大学に受かって親元を離れた。
高校の頃から付き合っていた彼とは、ちょっと離れてしまった。
住むことになったアパートは大学と同じ市内に住んでいる知り合いが探してくれた。
ちょっと奥まったところの105号室(4つ目)
角部屋で、本当は日当たりもいいはずなのだけれどなんか薄暗い。
まわりは大家さんの庭で、うるさくもないし物騒でもない。
はじめての一人。
そのせいか、凄く凄く夜が重かった。
友達はあっという間に出来て、色々楽しかったんだけど、部屋の中が、隅が、トイレが風呂場が重かった。
早く、この部屋から抜け出したい。
意味もなくそう感じたりした。
ある日のこと、金縛りにあった。
耳元で誰かが囁いている。
それも、意味のない言葉をえんえんと。
まるで、テープを巻き戻ししたかのようなそのような男の声を、動かない体、閉じられずずっと天井を見つめるだけの目、で聞いていた。
体は動かないだけではなくて、まるで上からサランラップでぎゅっと押し付けてるかのような圧迫感。
息が浅い、苦しい。
部屋には勿論自分しか居ない。
誰にも助けを求められない。
凄い怖かった。
そのうち、足元の方から黒い厚みのないものが徐々に顔の方に近づいてきた。
やだよー、やだよー、せめて目をつぶりたい。
叫びたい、逃げたい!!!!!
と、焦ってるうちにいつの間にか一瞬意識が途絶えた。
本当に5,6分だと思う。
目を覚ましたら、5時ちょっと前だった。
体が動いた。もう、怖くてココに一人で居られない。
即効で着替えて一番近くの男友達のアパートに転がり込んだ。
半泣き状態だった。
とりあえず落ち着かせてもらって、8時頃一旦部屋に戻り講義の準備をして大学に行った。
講義を受けた後大学のサークルに顔出して、今朝の事を皆に大騒ぎで話していたら一人の先輩が話しかけてきた、いつもは明るくて可愛い女の先輩だけどその時は、
「真面目な話していい?ちょっと手を握らせてね」
と、神妙な顔をして私の手を握ってきた。
「私ね、その人の手を握るとその人の住んでるところや、強く思っていること、守ってくれてる人の感じがわかるの。まあ、なんとなくだから信じても信じなくてもいいけど。
あなたのね、お部屋全然玄関の扉から先に進めないのよ。原因はわからないけど。不思議ね。」
って、先輩、あなた何が言いたいんですか?
と、心の中で突っ込むが、もし怖いこと言われたらどうしようとか思って何も言葉が出てこない。
「まあ、見えないだけね。」
と、意味不明な事を言い残して、どっかに行ってしまいました。
私は、あの部屋で一体どうすればいいんでしょうか?
まあ、半数のサークル仲間の意見「疲れてたんだろう。」に従うことにしましたが。
その後はしばらく電気付けっ放しで寝ることに。
ちょっと離れている彼氏は、毎晩公衆電話から電話をかけてきてるんだけどこの騒ぎのあった2,3日後、凄い切迫した声で
「ごめん、長く話していられない。今この辺鉈を持った殺人犯が逃亡してるらしい。
とりあえず、声聞けたから切って部屋で大人しくしとくな。」とそれだけ言って切れた。
ラジオを付けたら、確かに彼のアパート周辺で厳戒態勢が引かれてると。
彼の部屋には電話がないので、こちらから連絡は出来ないし、電話するために外出するのはもう夜だしできっこない。大丈夫なんだろうか?と、何も出来ない状態で悶々としていた。
その後、10分もしないうちに又電話が鳴った。
「なに?」
彼からだと思ったら実家からだった。
「あのな、じいちゃん肺癌で入院した。」
「え?リウマチじゃなくて肺癌?」
「結構痛いの我慢して、リウマチの痛みも肺癌も我慢して、進んでしまってるらしい。」
「そんな、おじいちゃん手遅れなの?」
「わからん。おじさん(大学病院の気管支専門の)医者がすぐ来て見てくれるって。」
「わかった、何かあったら知らせて。」
ハンマーでたこ殴りされてるような感じだった。
私のおじいちゃんは背が高くて足が長くて賢くて男前で、商売を大きくして私たちには優しくて、おじいちゃんが居たから頑張って大学にも入れたのに。
そんな動揺と、彼が凄く危ない状況?に陥ってる、私は一体何を考えればいいんだろう?
一体私は何なんだろう?
なんか、何がどう起こっててどうなっていくのかわからなくて、不安で不安で、その晩はただただ涙を流していた。
とりあえず、翌朝の10時過ぎ殺人犯は捕まったとニュースで言っていたのでひとつは安心できた。
そして大学に行きサークルに顔を出すと、例の女の先輩が居た。
「先輩、昨夜大変だったんですよ。」と、昨日の事を話し出そうと思ったら、
「重荷になったらかえてもいいんだよ。」と、ニコっと笑って言った。
「え?何の事ですか?」と、聞いても
「ふふふ」と笑うばかりで答えてくれなかった。
「やだなあ、もう、先輩の意地悪」
と、もうきっと詳しいことは教えてくれないだろうと、その場を立って中のいい友達のところへ行った。
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by tyrano | 2007-03-16 16:53 | 色々